警鐘 渡邉美樹:日本はつぶれる?ワタミ創業者がならすキケン信号

読んだ本の感想
読みやすさ 読みやすい
想定ターゲット 中小企業経営者
勝手な評価 ★★★★☆

渡邉美樹(わたなべ みき) さんといえば、ワタミの創業者。

一時期は政界に入り政治家として活躍されていましたが、その間にワタミの状況が財政低迷。

渡邉氏が政治家生活に見切りをつけて再度経営に復帰したところ、ワタミが奇跡の復活をとげたことも記憶に新しいところです。

そんな凄腕のカリスマ経営者が最近書いた本が、この警鐘。

帯には「このままでは日本はつぶれる」と不穏な言葉がありますが、この本を読むと、その言葉があおりではなく、高確率で起こりうる未来のひとつだと感じられます。

本当に日本はつぶれる!?

なぜ日本がこのままではつぶれてしまうのか?

それは借金が恐ろしいペースで膨れ上がっているから。

企業であれば、借金があれば出費を押さえますよね。

もし年度の予算が1億円であれば、8000万円に抑えれば手腕を評価されるでしょう。

ところがお役所では1億の予算を使い切らなければ、仕事ができないヤツと後ろ指さされることに。

なぜなら予算が余れば「こんなにいらなかったね」と判断されて、翌年度の予算を下げられてしまうから。

そこで、何としてでも1億円の予算を使い切る手腕が大事になってくるのです。

要は構造自体が間違っているのです。

こうした事情のため緊迫した財政状態にも関わらず、経費が削減される兆しはまったくなしとか。

「いやまさか、そんな!」と思いたい。

ですが実際に国会議員となった渡邉氏は、責任放棄の国会の状況を目の当たりにしてきました。

何とかしようと彼が改革案を唱えると、「検討しません」と返されたこともあるとか。

本の中では、にわかに信じがたい、いえ信じたくない真実が赤裸々に語られています…

何故政治家は動けない?

ではなぜ、こんなおかしな状況になってしまったのか?

渡邉氏は企業経営をしていた経験を基に、国の状況を企業に置き換えて分かりやすく解説してくれています。

会社の部署は営業部など直接売上に貢献する直接部門と、総務部など社内をサポートする間接部門のふたつに分かれますよね。

数字によって評価しやすい営業部と違い、間接部門は何をしているのか、よく分からない面があります。

そのためか間接部門は業績をアピールしたがり、また経費を増やす傾向が強いとか。

間接部門で働いていた経験がある私としては耳が痛いですが、分かる気がします^^;

経営者は、無駄な経費がいつのまにか増えていかないよう、間接部門に目を光らせておかねばいかないそうです。

ところが日本という国単位で考えたとき、「間接部門」に当たるお役所を見張る役割の人がいない。

いえ、本来なら国民がちゃんとチェックせねばいけないはず。

ですが実際には機能しなくなっている。

そのためにジャンジャン経費は使われ、ただでさえ膨大な借金が膨れ上がってしまった。

これが、今の日本のキビシイ実情だそうです。

本当に日本経済が撃沈したら何が起こる?

「警鐘」では、このままでいけば、日本の経済はとんでもないことになる可能性があると警告をしています。

かつての韓国やギリシャ、アルゼンチンといった国々が経験してきた経済破綻です。

こういった国々では、次のような状況が起こっています。

  • 自国の貨幣価値が一気に減る
  • 公務員を大量に解雇
  • 所得税が60%に
  • 富裕層は国外へ出る

ある日突然、持っているお金の価値が3分の1になってしまう。

あるいは、それ以下かも。

そんな恐ろしい事態が訪れるかもしれないのです。

今後に備えて何ができること

もしそんな事態になってしまうのだとしたら、今から何かできることはないか。

渡邉氏は、ここにこそ経営者としての目線が活かせると説いています。

経営者は、常に先を見越して柔軟に動かねばなりません。

やわらかい発想力で考えていけば色々な手段が浮かびます。

たとえば日本の貨幣価値が下がるとすると、輸入産業は大痛手をこうむるでしょう。

ですが輸出産業は逆にチャンス。

日本で安く良いものを作って、それを海外に出していく。

こうすることで、ピンチをチャンスに変えられる。

この本のターゲットは「中小経営者」ということになっているので、こういった大きなアイディアが提案されているわけですが^^;

ただ個人でも、色々と考えられることはありますよね。

たとえば外貨預金をしておくとか、そして何より自分のスキルを上げておくとか。

国や会社に頼れなくなる時代に備えて何ができるか、考えていくべき時かもしれません。

読書後感想

今回「警鐘」を読んで思った以上に日本経済の深刻さを感じました。

不穏な予測は、もちろんただの可能性のひとつ。

もっと明るい未来が待っているかもしれません。

ですが最悪なシナリオを想定しつつ動いていかねば、いざという時にアウト。

こういった状況を改めて考えさせられました。

なお今回の記事では日本の危機に関する部分をメインにお伝えしましたが、本の中にはワタミのこと、経営者としての時間の過ごしかたなどのトピックも盛り込まれています。

たとえば、渡邉氏は一日のはじめは、その日に行うことを予めイメージしてから動くそう。

こうするとムダなく時間をスケジューリングできるから。

こんな敏腕経営者の習慣や考え方なども垣間見れる一冊です。

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