ロバート・ライシュ著【最後の資本主義】から考える今後の社会と仕事

読んだ本の感想

ロバート・ライシュ氏の【最後の資本主義】の読書録です。

この本は、「いまの資本主義って、おかしい気がする」「今後どう働いたらいいんだろう」といった疑問をもつ人におすすめ。

原題は Saving Capitalism (資本主義を救う)、と、なかなか緊迫感があるタイトルです。

★3個を最高として、勝手に評価してみました。

読みやすさ ★★☆
面白さ ★★★
おすすめな人 今の資本主義や格差社会に疑問を感じる人

アメリカで何が起こっているの!?と感じた人

これからの社会と仕事について知りたい人

ロバート・ライシュ氏について

*画像引用元:ウィキペディア

まず、著者のライシュさんについて簡単に紹介します。

ロバート・ライシュ氏はクリントン政権では労働長官、そしてオバマ大統領のアドバイザーまで勤めた超政治の中枢にいる人です。

こんな立ち位置のライシュさんですが、政府や現在のシステムに対して、以前から強烈に批判をしています。

今アメリカや日本で起こっていること

著者の主張は、今の資本主義は、ルールが間違っているというもの。

かつては中間層がいて、普通に働けば、家族を養い、趣味を楽しみ、老後を悠々と暮らせました。

ですが今は、普通に働いても、カツカツの暮らししか送れません。

子供の教育費も払えない。

子供は大学に行くためにローンを借りるものの、卒業しても仕事はなく、ローンの返済に苦しめられる。

なぜ、こんなことになってしまったのか?

それは、かつていた中間層はなくなり、その人たちが得ていた富は、ほんの一部の人に集中する仕組みになってしまったから。

こちらは、アメリカにおけるトップ1%の人々と残り90%の人々の30年にわたる賃金上昇率の比較。

*参照元: Robert Reich氏のYoutubeチャンネル

もう、格差の開きが明らかですね。

物価の上昇など考えると、多くの人々は、以前よりも貧しい暮らしになったといえるでしょう。

なぜこんな仕組みが可能になったのか、権益者たちが、どのようにルールを作り変えてしまったかが、本書の中につづられています。

アメリカほど極端ではないにしろ、日本も、他の国もこの中間層の消滅と貧困化が起こっているように思われます。

これは、富を得ている人が悪いのではなく、そういったことが可能なシステムが問題

大企業やお金持ちが自分たちに有利なように変えられる、今のルールを見直す必要があります。

ライシュさんは、これ以上貧富の差が開けば、キケンなことになると、本書が書かれた2014年の時点で警笛をならしています。

彼はその前からこうした警告をしていますが、こうした予想は、現在的中しているように思います。

今のアメリカは、一見すると、パンデミックや大統領選によって不安定になっているようにも取れます。

ただ実際のところは、格差に不満をもった人たちの怒りが、こういったことをきっかけに噴出しているのでは?

現在の状況は、こう理解すると腑におちます。

この状態に対して、どうしたらよいのか。

ライシュさんは虐げられた側の人たちが、上手に団結しあうことで打破の道が切り開かれるとしています。

このあたりは、なかなか難しい気がしますよね。

今後も稼げる仕事は何か

このような格差が開く中、テクノロジーの進展によっても、中間層の仕事に変化がもたらされています。

ライシュさんは、現在、そして今後の仕事の種類を次の3つに分けています。

① ルーティン・プロダクション・サービス マニュアル化可能な仕事

工場のルーティン業務、データ入力、監督業務など。

② インパースン・サービス 対人業務

販売スタッフ、介護施設スタッフ、保育士など。

③ シンボル・アナリティクス・サービス 頭脳労働

エンジニア、投資銀行家、法律家、経営コンサルタントなど。

ライシュさんによると、3つの仕事は、下記のように変化していくとのこと。

マニュアル化可能な仕事は自動化や、新興国への流出で減っていき、

②対人業務は増えていくが、競争激化や機械化により、報酬は下がる、

③頭脳労働は報酬も需要も上がっていく

彼は著書「ザ・ワーク・オブ・ネーションズー21世紀資本主義のイメージ」(ダイヤモンド社、1991年)の中で、既に上記を予想しています。

結果はそのとおり、というより、予想を上回るペースでした。

①に従事している人は、かつて25%を占めていましたが、本書が書かれた2014年時点では20%以下に減っていました。

仕事を失った人は②の対人サービスになだれこみ、競争は激化し、賃金は低下しています。

③は稼げるものの、難易度が高く、仕事に必要なスキルを身に着けるための教育が必要です。

ライシュさんは、今後、ますますこの傾向が続いていくとしています。

つまり稼ぎ続けるには、③の頭脳労働に必要なスキルを身に着けることが重要ということになります。

さいごに

というわけで、最後の資本主義を読んで感じたこと、強烈に残った部分をまとめてみました。

「もっと知りたい」と思ったら、ぜひ、本を読んでみてください。

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追加 2024/1/4

最近はAIの進化が著しく、この記事で書いたことは必ずしも当てはまらないように感じます。

今後、頭脳労働の中でAI化が進んでいき、ブルーカラーと呼ばれる仕事のほうが、一時的に需要が高まっていく気がします。

ただ本書は、資本主義そのものが問われていく中、格差について考える中で、参考になる本です。トランプさんへの人気についても理解できます。

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