知の巨人と称されるジャックアタリの「2030年の未来予測」の要点を解説します。
今後起こりうる未来を数字を用いて緻密に、そして大胆に予測している一冊です。
この本の執筆は4年前かと思いますが、今世界中に猛威をふるうCovid-19も予測しています。
今後の社会を考える上で、かなり参考になる本といえるでしょう。
ジャックアタリとは
この本を書いたジャックアタリは、フランスのフランスの経済学者、思想家、作家、政治顧問。
ミッテラン政権以後、長きに渡り、仏政権の中枢で重要な役割を担った人物として知られ、つづくサルコジ、オランド、マクロン大統領にも直接的な影響を与えており、フランスのみならず欧州を代表する知性のひとりと目されている。
参考元:wikipedia ジャック・アタリ
うぉー。なんだか、すごそうな人です。
口先だけの評論家ではなく実務に携わり、政府の裏まで見てきた人。
ちなみにお顔はこちら。
公式ホームページのプロフィール写真ですが、フランスっぽくておしゃれです。
画像出典元:ジャックアタリ公式HP
ジャックアタリの未来予測原書
原書は2017年に発売された “Vivement apre-demain“
apre-demain は 明日の後=明後日
「明後日が待ち遠しい」「明後日を力強く!」といった意味です。
ただ日本人にはピンとこない。
そこで「2030年の未来予測」というタイトルになったのかなと思います。
ジャックアタリの未来予測の要約
この本は今後の世界がどうなるのか、2016年あたりに予想しています。
今後の世界をポジティブとネガティブ目線の両方で解説していますが、圧倒的にネガティブ優勢という感じ。
さもありなんという材料をこれでもかと投げつけてくる本で、読んでいて苦しくなります。
要約しつつ、読みどころを解説していきますね。
憤懣が世界を覆いつくす
色々と技術革新が進み明るい材料はありますが、その裏では次のような難題が山積みです。
- 高齢化する人口
- 移民問題
- 地球環境の悪化
さらに現在の社会は一握りの個人だけが富を集中して得られる構造になっている。
これでは当然、憤懣(ふんまん)が高じてくる。
本では現在社会を「憤懣(怒りのやり場がない思い)の社会構造」と表現しています。
このまま放置してければ2030年までにとんでもないことになる、
今こそ我々は利他主義(人の幸せが自分の特になる)の精神に目覚める必要がある、と警笛を鳴らします。
ポジティブなシナリオ
とはいえテクノロジーは日々進化しています。
この恩恵を受ければ2030年には素晴らしい変化が起こります。
一例を挙げると次のとおり。
- 子供たちはバーチャルリアリティメガネで仮想世界を体験することで教育を受ける
- ロボットによって苦役が軽減される
- 3Dプリンタで家まで設計可能に
- 海水を淡水にする技術も進み水問題が解決
- 農薬を使用しない有機農業が広まる
水問題・労働問題・エネルギー問題といったすべての面でポジティブな改革が起こります。
ただしこれは「民主主義」と「利他主義」への要求が高まった場合のシナリオ。
今の状況で言うと、可能性は高くありません。
ネガティブなシナリオ
では、このまま改善されぬままの状況が続くとどうなるか。
誰もが安全を求めた結果起こる「超監視社会」の到来や大規模な戦争について示唆しています。
他あらゆるリスクが想定されていますが、ひとつ、既に当たっているものがあります。
それは Covid-19感染の拡大。
本には次のように書かれています。
新型インフルエンザは1918年から1920年にかけて人類のおよそ5%が犠牲になった「スペイン風邪」と同じぐらいの猛威を振るう恐れがある。
スペイン風邪とは第一次大戦中に起こったパンデミック。
実は大戦でなくなった人よりも4倍~5倍の多くの命を奪ったと言われる疫病です。
アタリは数年前から、前回と同規模のパンデミックの到来を予見していたのですね。
日本はどうなるのか
日本については、日銀の国債買い入れによるリスクが指摘されています。
巨額の債務は維持できなくなり、円の暴落が起こりえます。
またアメリカと北朝鮮の間で起こる戦争に巻き込まれるリスクも指摘。
さらに中国が日本の領土に進出してくる可能性も。
正直、途中で読むのをやめたくなります…
日本だけが危機的状況にあるわけではなく、他の国についても同等、あるいはそれ以上のリスクが解説されています。
今後どうしたら良いのか。
こういった状況の中、私たちはどうしたら良いのか。
実は今後の未来を明るいものにできるかどうかは、我々ひとりひとりに託されています。
アタリは本の最後で本来の自分自身になり、ないがしろにしてきた「利他主義」を取り戻すよう呼び掛けています。
利他主義の重要性を伝えた文章を引用しますね。
他者を喜ばせることができないのなら、あるいは他者の役に立てないのなら、それは自身の成功とは程遠い。
とくに、次世代に対して利他的になることは自分自身の利益なのだ。
利他主義っていうと馴染みのない熟語ですが、要は「情けは人のためならず」ですね。
良いことをすると、まわりまわって自分のところに返ってくるよ、ということ。
私は以前、「人を甘やかしちゃいけない」という意味だと勘違いしてました。
自分に返ってくるのは、自分の子供たちの世代になるかもしれない。
だけれども今、その場の快楽や優越感、承認欲求におぼれれば取り返しがつかないことになる。
2030年まで人類が生き残れるかどうかは、今の私たちの在り方にかかっているのです。
おまけ:ジャックアタリの未来予測が紹介されていた動画
ちなみに私がこの本を知ったのは、マナブさんの動画「これから伸びる産業を予想しました」で紹介されていたから。
こちらも一見の価値アリ。
今後の産業や社会を考えていくうえで思い悩んだら、知の巨人の思考に触れてみてください。
違った形で世の中が見えてくるかもしれません。